212の21世紀〜マチは変われるか

第1部・財政編

 2.自治体破産〜「へそくり」
 貯金目減り、狂う返済計画


 住民一人当たり平均ざっと五百万円の借金。のっけから暗い話で始まりましたが、私たちは、借金ばかりを背負っているわけではありません。借金もしているけれど、ちゃんと貯金もしているのです。

 表は、道内二百十二のそれぞれの自治体が九八年三月末時点で蓄えている「積立金残高」を住民一人当たりの額に換算した上でランキングしたものです。全道平均では一人が十万円ちょっとの貯金をしている計算で、借金の五十九万円を埋め合わせるにはほど遠い状況ではありますが、ここでもやはりまちによるばらつきが目に付きます。

【住民1人当たりの積立金残高ランキング】

 ワースト 10  ベスト 10

順位

市町村

貯金額(円)

順位

市町村

貯金額(円)

1

夕張市

1,571

1

泊村

3,426,335

2

苫小牧市

20,525

2

西興部村

3,345,360

3

旭川市

31,418

3

音威子府村

2,121,660

4

小樽市

36,527

4

幌加内町

1,535,272

5

滝川市

37,517

5

鶴居村

1,437,729

6

恵庭市

37,548

6

朝日町

1,217,607

7

室蘭市

39,068

7

大滝村

1,196,797

8

札幌市

41,315

8

奥尻町

1,159,077

9

美唄市

43,184

9

赤井川村

1,148,808

10

余市町

48,262

10

陸別町

1,135,807

 最も蓄えがあるのは後志管内泊村の三百四十二万円で網走管内西興部村とともに抜きん出ています。意外にも、と言ったら失礼になるかも知れませんが、上位には市町よりも村が目立っています。西興部村の場合は、借金でも貯金でもランキングの第二位で、その「帳尻」はプラスに収まっています。

 ■94年から減少の一途

 逆に貯金の少ない方には第三位の旭川市や第八位の札幌市など比較的大きなまちが並んでいます。トップは夕張市の千五百七十一円が突出しています。
 「積立金」という名の貯金とは、いったいどんなものなのでしょうか。積立金の内容を大きく分けると、次のようになります。
 (1) 財政調整基金
 (2) 減債調整基金
 (3) 特定目的調整基金

 難しいお役所言葉が並んでいますが、どれも「調整基金」とついているように、いわば将来台所具合が怪しくなるような事態に備えての蓄えで、家庭で出産や進学に備えて積み立てておく貯金と基本的には同じものと考えて良いでしょう。

 このうち最も多くを占めるのが特定目的調整基金で、施設建設などに備えて特定の目的額を確保するためのものです。減債調整基金は、最初に紹介した地方債という借金をスムーズに返済していくための備えです。一番少ない財政調整基金は、経済状況の悪化などで財源確保が難しくなるような事態に備えた、いわば「へそくり」といえるものです。

 貯金はもちろん多いに越したことはありませんが、道内二百十二市町村の総体で見ると、九四年以降どんどん減少しています。貯金の取り崩しが積み立てを上回っているためで、特に減債調整基金の取り崩しが目立っています。

 ■貸し手も慎重、選別へ

 減債調整基金の「目減り」というのは、将来の借金返済のための蓄えが減ることにほかなりませんから、先食いによって現在をしのいでいる状況ともいえます。地方自治体が破産することはない、と良くいわれますが、返済のあてのない相手に対して貸し手が慎重になるのは当然のことでもあります。借金が膨らむ一方で貯金が減っていく状況を見過ごすことはできません。

 現に、自治体の財政状況を基に返済能力を格付けする動きが強まっており、地方債の資金を供給する金融機関が借り手を選別する時代も近付いているのです。借金さえできない自治体では、公共施設の整備が滞ったり、住民税や手数料、使用料の引き上げという現象が生じ、自治体間の貧富の差がそのまま住民サービスの差となって現れることにもなるわけです。