3.自治体破産〜動脈硬化
99市町村の財政「危険ゾーン」
そもそも市町村が借金をするというのは、どういうことなのでしょうか。住民の生活に直結した行政の推進が借金によってまかなわれる仕組み自体にも問題がありそうです。「借金も財産のうち」という言葉もありますが、地方財政法第二条では「地方公共団体は、その財政の健全な運営に努め、いやしくも国の政策に反し、又は国の財政若しくは他の地方公共団体の財政に累を及ぼすような施策を行ってはならない」と規定されています。つまり、原則として将来の財政を危うくする恐れのある借金は禁止されているのです。
ただし、これには例外規定があって、次の五項目の資金調達については、借金つまり地方債の発行が認められています。
(1)交通、水道、ガス事業などの公営企業
(2)出資金、貸付金の財源
(3)地方債の借り換え
(4)災害復旧関係費
(5)公共施設の建設事業費、土地購入費
■少子、過疎化の逆風
なぜ例外的に認められるかというと、「借金しても返すあてが保証されているから」という考えに基づいています。
確かに、公営事業は受益者からの料金収入という資金回収の道があり、出資、貸付もとんでもない相手に貸すのでなければ資産が減るわけではないし、利息も付いて戻ってきます。「借り換え」も新たな債務を背負い込むことではないし、突発的な災害には応急処置として借金もやむを得ない対策と考えることができるでしょう。
ちょっと問題がありそうなのが、五番目の建設事業費、土地購入費で、前の四つに比べると「返すあて」に関してはどうしてもクエスチョンマークを付けざるを得ません。確かに学校、保育所や道路の整備によって人口が増え経済活動が活発になれば、将来的にはまちの税収も伸びて返済金を確保できそうです。
しかし、少子高齢化、過疎化が進む現実の前では不安が残ります。
「住民にとって住み良い環境は作りたいが、借金を背負い込んで将来の財政が逼迫することは避けたいのだけれど…」。財政の現状を目の当たりにした、ある「一年生町長」の声です。
特に過疎地の町村長は、「両刃の剣」でもある地方債の処理に頭を痛めたり、工夫を凝らしているのが現状です。しかし、結果的には、積立金が目減りする一方で借金は増え続けています。
■地方債は「両刃の剣」
表は、市町村の財政規模に占める、地方債の元利償還金と一時借入金の利子の割合(「公債費比率」と呼びます)をランキングしたものです。比率が高いほど、弾力的な財政をしにくい状況に向かっており、人間の体にたとえると、徐々に動脈硬化が進んでいる状態と考えていいでしょう。