212の21世紀〜マチは変われるか

第1部・財政編

5.自治体破産〜格付け機関
 銀行も融資に慎重、選別時代に

 地方行政は借金なしでは進められない状況に陥っています。しかも、抜き差しならない段階にあって、自治体にとって困ったことは、民間の金融機関も地方債の引受に慎重になってきていることです。
 具体的な動きとして、日本格付け投資情報センター(R&I)という会社が主要な自治体の地方債の「格付け」を始めたことが挙げられます。

 格付けといえば、債券の元利金支払いの確実性の度合を記号で示した「債券格付け」が知られています。投資家に向けた情報の一つで、ムーディーズやS&Bなどアメリカの格付け機関が良く知られ、金融ビッグバンの到来とともに日本でも普及しつつあります。

 ■札幌は第2位のAA

 R&Iでは、都道府県、政令指定都市とこのほかの主要都市を対象に、財務状態を示す十六の指標に基づいて自治体ごとの財務をランク付けし、地方債を格付けしています。格付けはムーディーズと同じように、「AAA」を最高に「C」まで九段階に区分し、たとえば中位にある「BB」は「債務履行の確実性は当面問題ないが、将来環境が大きく変化した場合、十分注すべき要素がある」といった具合に評価しています。

【R&Iによる地方債格付け一覧(99年10月末)】

地方債
格付け
財務
ランク
地方債
格付け
財務
ランク
札幌市 AA+ op b 茨城県 Aa op c
仙台市 AA+ op b 埼玉県 AA+ op c+
千葉市 AA+ op c+ 千葉県 AA+ op c
横浜市 Aa op c+ 東京都 AA+ op b+
川崎市 Aa op c+ 神奈川県 AA op d+
名古屋市 Aa op c+ 新潟県 AA+ op c+
京都市 AA- op d+ 長野県 AA op d
大阪市 Aa op d+ 静岡県 AA+ op c+
神戸市 AA- op e 愛知県 AA op c
広島市 AA op d+ 京都府 AA+ op b
北九州市 AA+ op b 大阪府 AA- op e
福岡市 AA- op d+ 兵庫県 AA- op e+
北海道 AA- op e+ 広島県 AA+ op c
宮城県 AA op d+ 福岡県 AA op d+

 道、札幌市とも九九年十一月末時点で最高位の「AAA」に次ぐ「AA」と評価されています(厳密には札幌市はより上位に近いという意味の「+」、道は下位に近い「−」がそれぞれ付いています)。「AA」は「債務履行の確実性は極めて高く、優れた要素がある」とかなり高い評価ですが、道、札幌市に限らず税収の落ち込みが著しい都道府県、政令指定都市の評価は、ここにきて厳しくなる傾向にあるようです。

 地方債の格付けは、自治体の借金返済能力、言葉を代えると信用力をランク付けしていることにほかなりません。金融機関の格付けは、銀行倒産が現実のものとなってきたからこそ注目を浴びたわけですが、自治体についても「不倒神話」に陰りが見えてきたことを示しているともいえます。

 現実には自治体の倒産は法律上あり得ませんが、地方債の格付けは少なくとも、金融機関が資金の提供先として自治体の選別を始めようとしていることを示しています。

 ■勝ち負け2局化に拍車

 これまでは、基本的に自治体の信用力は一定の評価を受け、A町とB村の間に差はなかったわけですから、格付けというのは「選別」の第一歩でもあるわけです。
 「選別」の延長線上にあるのは、企業の世界と同様に「勝ち組」と「負け組」の二極化にほかなりません。信用力の低いまちは公共事業を進めたり、福祉など住民サービスを高度化したくとも十分な資金を調達できない。まちづくりが停滞するから、地域の魅力が薄れて人口の流入や企業進出が鈍くなるどころか、それまで住んでいた人たちさえ、逃げ出してしまう。そんな時代すらやって来かねません。

 格付け評価では、「B」が「債務履行の確実性に問題があり、絶えず中止すべき要素がある」、最低位の「C」が「債務不履行に陥っているか、またはその懸念が極めて強い」と定義されています。
 市町村を経営体と見なした場合、これらに該当するまちは決して少なくないのです。