212の21世紀〜マチは変われるか

第1部・財政編

7.自治体破産〜「やり手町長」
 税収乏しく、実態「3%自治」


 ふるさとづくり事業では、地方債発行の制限が緩和されたことと合わせて地方交付税による財源対策が、市町村にとっては「甘い誘惑」となったわけです。そもそも、借金や国の援助が不可欠な地方行政の実態は、地方自治の考えとは矛盾します。経済的にも市町村が自立していることが自治の最低条件だと思うからです…。

 自治体の財政は、主に次の三つの財源によって支えられています。
 (1)地方税収入
 (2)国からの地方交付税
 (3)国庫支出金

 ■まち縛る補助金行政

 地方税収入の八〇%以上は、住民と法人が収める市町村民税と固定資産税の二つで占められています。ほかに市町村たばこ税、軽自動車税などがあり、いずれも市町村に直接入ってくる税金で、自由に使うことができます。純粋な自主財源といって良いでしょう。

 地方交付税は、国税として収められた所得税、法人税、酒税のうちの三二%、消費税の二四%、たばこ税の二五%に当たり、自治体の人口や面積などに応じて国から配分されます。使い道も市町村などの自由に任されていますから、実質的には自主財源に近いものといって良いでしょう。

 国庫支出金は、補助事業のところで少し説明したように、国庫補助金のように使い道があらかじめ国によって決められた財源です。いわば「ひも付き」のカネで、配分の基準がはっきりしていないため中央省庁の担当官の「さじ加減」次第の側面も否定できません。

 特に補助金は、陳情行政の要因の一つであり、省庁や国会議員との間にどれだけ太いパイプを持っているかで町長さんらの力量が問われ、ほかのまちに先駆けて補助金を引っぱり出した町長さんは「やり手」と呼ばれるわけです。しかし、本来の地方自治・住民自治の考えからは、疑問の多い制度でもあります。

 地域の特性に合わせて、住民の声を聞きながらまちづくりを進めるという意味では、もちろん自主財源が多いに越したことはありません。しかし、現実には歳入全体に占める地方税収入の割合(「地方税収比率」といいます)は、都道府県で三一・九%、市町村で三六・五%に過ぎません。「三割自治」というのはここから来ている言葉です。

 ■自主財源平均22%

 北海道の場合は、二百十二市町村の平均で二二・四%しかありません。二〇%以上はわずか二十八市町村で、残る百八十四市町村のうち一〇%台が五十七市町村、ヒト桁は百二十七市町村にも上っています。表を見るとわかるように、「三割自治」どころか「三%自治」のまちさえあるのです。

【地方税収比率ランキング】

 ワースト 10  ベスト 10

順位

市町村

税収比率(%)

順位

市町村

税収比率(%)

1

音威子府村

2.19

1

泊村

51.07

2

幌加内町

2.39

2

苫小牧市

39.02

3

西興部村

2.82

3

室蘭市

36.19

4

歌志内市

2.83

4

札幌市

36.03

5

神恵内村

3.03

5

恵庭市

35.97

6

白滝村

3.07

6

石狩市

33.50

7

初山別村

3.11

7

千歳市

33.22

8

剣淵町

3.34

8

北広島市

31.75

9

歌登町

3.49

9

江別市

31.37

10

島牧村

3.58

10

旭川市

29.39

 下位にランキングされたまちは、ほとんどが過疎地であり、地元に大きな工場などもありません。逆に上位に並ぶのは札幌をはじめとした中核的な都市です。最上位の後志管内泊村は地方税収が五一%という抜きん出た存在ですが、原子力発電所の立地に伴う固定資産税の収入などが最大の要因といえます。

 人口の増加による税収アップがとても見込めないまちが企業誘致に熱心なのは、固定資産税の収入増に期待をするからなのです。核施設や産業廃棄物関連施設の立地で揺れる自治体に、自主財源の乏しい過疎地が多い背景には、まちの生き残りをかけたやむにやまれぬ事情もあるようです。