212の21世紀〜マチは変われるか

第1部・財政編

9.自治体破産〜地方交付税
 交付厚く「中央依存」批判も

 もともと乏しい地方税収が、長引く不況の向かい風にあって伸び悩んでいます。事業税や自動車税など経済活動に関連した地方税収のウエートが大きい都道府県に比べると、市町村が受ける風はやや弱いのですが、九七年度決算では全国の増加率が四・三%なのに対して、道内市町村は二・一%にとどまりました。しかも、前年を下回ったまちが七十六市町村もあったのです。

 ■国が自治体に再配分

 地方税収入が乏しいとなると、頼みは国から配分される地方交付税です。地方の公共事業の拡大の背景に地方交付税が巧みに利用されたことは前に触れましたが、地方交付税というのもわかりにくい制度ですね。
 地方交付税制度は、前の項で説明したとおり国税の一定割合を振り向けることで総額として地方の財源を保障するという目的と合わせて、交付税の配分を通じて自治体間の財政力の格差を解消するという二つの目的を持っています。

 地方交付税の総額は税ごとの割合に従って自動的に決まりますが、四十七都道府県と約五千五百の市町村への配分額は、個々の自治体ごとに財政需要の基準額と収入額をはじき出した上で、収入の不足に応じて決められます。算定はとても複雑で細かいため詳細の説明は避けますが、一定の行政の水準や施設の維持に必要な財源の不足分を充当するという考えが、基本になっています。

 地方交付税には「国が地方に代わって徴収する実質的な地方税」としての側面があることや、算定の複雑さから、自治体の面積や人口によって配分してはどうかという議論もあります。

 九九年春の東京都知事選では「東京で集められた税金の多くが地方にばらまかれている」という主張が候補者の間から巻き起こり、ちょっとした論議となりました。確かに、財政力の弱い地方の自治体に地方交付税が相対的に手厚く配分されているという側面も一概には否定できないものがあります。

 地方税収入が乏しい、自主財源の十分でない自治体にとっては、やはり地方交付税が頼みの綱となります。全国的にも地方税収入が低い水準にある道内では、必然的に地方交付税のウエートが高くなっています。こうした交付税依存が、「中央依存体質」につながっているという面も残念ながら否定できません。

 ■迫られる制度見直し

 歳入に占める地方交付税の割合(地方交付税依存度)は、全国平均の一六・九%に対して二七・九%と高率で、歳入の半分以上を地方交付税に頼っているまちは二十九市町村もあります。表のランキングにあるように、泊村は道内で唯一地方交付税の配分を受けていないまちということになります。

【地方交付税依存度ランキング】

 ワースト 10  ベスト 10

順位

市町村

依存度(%)

順位

市町村

依存度(%)

1

滝上町

57.66

1

泊村

0

2

西興部村

57.21

2

苫小牧市

3.01

3

豊浦町

56.69

3

千歳市

10.05

4

洞爺村

55.41

4

札幌市

15.03

5

積丹町

55.35

5

石狩市

15.72

6

妹背牛町

54.28

6

室蘭市

17.18

7

喜茂別町

54.25

7

北広島市

17.67

8

恵山町

53.88

8

釧路市

17.99

9

島牧村

53.66

9

旭川市

18.81

10

寿都町

53.61

10

函館市

18.86

 国自体の財政難が深刻化する一方で、借金がかさむばかりの自治体は、さらに借金を増やす交付税頼みの単独事業を縮小する傾向も見せています。これは、私たちの生活に身近な社会資本整備の停滞につながり、景気にも微妙に影を落としています。

 中央依存の体質を改め、地域が進むべき道を自ら決める地方自治の理念を実現するためにも、まちの自立・住民自身の意識改革とともに、国の税源の地方移譲を含めた地方財政の見直しが必要な時期に来ています。