まちづくりのための「SWOT分析」活用法

 

2004/03/22
(オンラインプレス「NEXT212」153号掲載)

 

 <1>チャンス生かし、強みを伸ばす 

 「SWOT(スウォット)分析」は、 主にマーケティングに使う経営分析法として考案されました。その名は、次の4つの要素の頭文字に由来しています。

 S:Strength(強み)
 W:Weakness(弱み)
 O:Oppotunity(機会)
 T:Treat(脅威)

 一般には、企業など自分の組織の内部環境と外部環境の2つに分け、内部に持つ「強み・弱み」と、外部から影響を受けると考えられる「機会(チャンス)・脅威」をそれぞれ整理しながら分析を進める手法です。

 ■分析基に「おしん」が取った戦略

 具体例として、TVドラマ「おしん」でおしんの経営する田倉商店の1956(昭和31)年当時をSWOT分析してみましょう。上の表のように、行商から積み上げ店舗を構えたばかりで、家族経営の域を出ていません。一方で、戦後の復興期を抜けて、消費者を取り巻く社会情勢も大きく変わろうとしています。

 問題は、「機会(チャンス」をどう生かして「強み」をどう伸ばすか。同時に、いかに外部からの「脅威」を回避し、「弱み」を補うか。SWOT分析に基づいて、おしんが取った経営戦略は、こんな具合です。

  • 駅前出店によるセルフストア展開
  • 仕入れルートを生かした薄利多売方式
  • ご用聞き方式や対面販売の活用
  • 共働き世帯向けの総菜商品の開発

 家族経営という弱点を、金銭登録機(レジスター)を導入したセルフ方式で補い、時代の先端に挑戦しつつ、行商以来の顧客とのつながりを大事にする、という発想です。家庭的な総菜は、働く女性らに大好評で、この戦略が当たったことにより田倉商店は地方スーパーとしてチェーン店を広げていきました。  

 ■行政改革・新市計画にも使える技

 このようにSWOT分析では、現状把握を起点に、次のようなステップを踏みます。  (1)将来についてのビジョンと目的の設定  (2)目的達成のための戦略の構築  (3)戦略を実行するための行動計画の作成  (4)計画の確実な実施

 近年、地域づくりにこの手法を導入する動きが見られます。行政内部で活用するだけでなく、さまざまな統計資料などを提示することでマチの現状についての理解を深めながら問題点や課題を、住民と行政職員との対話または住民同士の対話の中で分析していくワークショップ方式で行われることもあります。また、合併協議の中で、新市計画を策定する際にSWOT方式を利用する事例も見られます。

 <2>住民も分析に参加、課題を共有する 

 SWOT分析の特徴は、第一にだれもが手軽に取り組める点にあります。もちろん、企業の場合はさまざまな財務データがそろっていたり、行政の場合は政策評価などのしくみを持っていれば、より客観的な分析が可能となるでしょう。

 ■フィーラム広げ、実践にもつなげる

 しかし、組織内部の「強み・弱み」は関係者が日ごろどこかで感じている事柄であり、むしろ、経営者や役所の幹部だけでなく、スタッフや現場担当者ら多くの立場の人が集まり、意見を出し合うことで効果を上げることができます。

 日常的な「実感」からより多くの項目が列挙され、影響度・重要度が整理されていくという一面のほか、分析・検証のプロセスを通じて、全員が共通の現状認識や問題意識を持つことができるというメリットも生まれてきます。こうした現状認識・問題意識の共有が、組織全体として積極的に戦略の構築と実行のベースとなっていくわけです。

 したがって行政の分野では、組織改革の手法にとどまらず、分析作業に住民も加えることで住民参加型のまちづくりを進めようとする取り組みが目に付いてきました。

 ■SWOT紙一重、明確な羅針盤を持て

 まちづくりにSWOT手法を活用する場合でも、重要なのは、戦略・計画のベースとなる目標・理念が明確であるかどうかです。特に、外部環境が大きく変わる時代においては、その変化は「機会」にも「脅威」にもなり得るし、「強み・弱み」も紙一重の違いだからです。

 前述の田倉商店の例でいえば、「スーパーの全国展開」か「高級鮮魚の専門店化」かいずれを目指すかで、SWOTは入れ替わり、店舗計画もまったく異なってくるわけです。

 左の図は、SWOT分析に基づいてまちづくりの戦略・実行計画を練る手順をイメージしたものですが、地域の方向性と目標を指し示す羅針盤がなければ、合併問題にどう対応するかという明確な態度も決められないことになります。合併を地域再生の「機会」とするのか、それとも「脅威」として回避するのか、改めて「まちづくりの原点」に立ち戻って 、住民とともにSWOT分析から始めてみてはどうでしょう。

 <3>分析シートを使った合併論議

 まちづくりのためのSWOT分析では、下のようなマトリック形式の分析シートを使う方法が考えられます。

 ■弱点に拘泥せず、長所生かす視点で

 まちづくりの「理念・目標」に沿って、縦の列に「強み」「弱み」の項目をそれぞれ書き出します。次に横の列に「機会」「脅威」を書き出し、縦横の列が交わるマスに当てはまる、機会に応じた強みの「活用策」、機会を生かした弱みの「改善策」、強みを生かした脅威の「解消策」、脅威に対する弱みの「回避策」を考え、全体としての「まちづくり戦略」をまとめていきます。

 ここで注意することは、「強み」よりも「弱み」に視点が片寄り、弱点を並べ立てて、その解決策に捕らわれがちになることです。もちろん弱点の克服は重要なテーマですが、それよりも長所や持ち味、他と比べての優位性や潜在的なパワーといった強みに目を向け、これらを生かすことで結果的に弱みも薄められるという発想が必要でしょう。ワークショップ方式で進める場合は、積極論に重点を置くことで、それまであまり表面に見えなかった強みが浮上するなど論議を活性化させる効果もあります。

 もう一つの留意点は、前述のように「機会」と「脅威」はいわば豆腐の裏表のように、見方次第で入れ替わるものであることです。「強み・弱み」も同様の側面を持っており、多様な立場の住民や職員がフォーラムに加わることで、論点が整理されていくことが期待されます。

 ■「広域圏SWOP分析」のすすめ

 「強み・弱み」の分析に当たっては、下の表のように人的資源・財政的資源・物的資源・情報的資源と柱を立てて検討する方法もあります。巻末に添付した分析シートは、まちづくり推進と合併の選択について考えることを主眼にしたものです。

 「機会・脅威」については、一般的な外部環境の変化項目をチェック式にし、行政サイドからは行政に対する住民ニーズの変化を挙げる欄も設定してあります。また、合併を想定する広域圏についてもSWOT分析する欄も設けてあります。分析の目的によってさまざまなシート作成の工夫があると思いますので、添付シートを参考にSWOT分析に取り組んでみてはどうでしょうか。


関連記事〜住民主体のまちづくりを考えるために

広域圏「SWOT分析」の事例(ニセコ・羊蹄合併をめぐって・PDF-1)

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