再建団体転落から10年
福岡県・赤池町
歳出削減に大なた、敬老年金も引き下げ
赤池町は人口約1万人、福岡県北東部にある農村ですが、かつては炭坑の町として栄えました。しかし、エネルギーが石炭から石油へと変わるに連れて、北海道と並んで有数の産炭地だった筑豊炭田でも閉山が相次ぎ、赤池町も過疎の町となってしまいました。
炭鉱城下町は一転して税収が大きく落ち込み、閉山後の住宅対策などの経費がかさむばかりで、町の財政状況は悪化。土地開発公社が抱えきれなくなった負債を町が引き取ったことが引き金となって、91年度には約32億円の赤字を出し、町独自による自主再建を断念せざるを得ない状況に追い込まれました。「財政再建団体」に転落してしまったのです。
12年がかりの再建策では、歳入確保と、歳出削減を二本柱に据えられました。職員の給与引き下げや削減ばかりでなく、町営プールの使用料や野球場、町民会館などの使用料のほか、町営住宅の家賃もそれぞれ10〜20%値上げされました。さらには、70歳で4200円支給されてた敬老年金は2000円に削られるなど、福祉関係にも厳しい見直しがかけられました。99年6月の大雨災害では、復旧工事のための補正予算が必要となりましたが、これも自治省の判断を仰がねばなりませんでした。町職員がスコップ片手に補修に走り回るような場面も見られました。
98年度の歳出は約58億円で、なお約3億円の赤字ですが、再建団体に転落前に約7億円だった普通建設事業費は約1億6千万円にまで圧縮されました。こうした徹底した歳出削減により、2001年度には赤字を解消する見通しになっているそうです。
■「童謡のまちづくり」で活気
赤池町役場には、ここ数年、全国の自治体からの視察が相次いでいます。地方自治をめぐる厳しい財政状況を反映した現象といえるでしょう。
財政再建の一方で、「緑と清流、やきものと文化のまち赤池」を基本理念にしたまちづくりも進んでいます。伝統工芸の上野焼の振興に力を注ぎ、2002年には「上野焼四百年祭」の開催を計画しています。また、童謡「かもめの水兵さん」の作曲者で地元出身の河村光陽にちなんだ「童謡のまちづくり」も年々活気を増し、「こどもの歌創作曲コンクール」には全国から応募があるそうです。
■「資格」が必要、赤字にはペナルティ
市町村が「財政再建団体」となるには、実質収支の赤字幅が標準財政規模の20%以上であることが資格要件となります。自主再建を目指すことも可能ですが、赤字幅によっては文教、厚生施設も含めた公共施設、用地の取得のための起債制限というペナルティがあり、これに耐えられなければ、再建団体に「転落」せざるを得ないというわけです。
■銀行救済並みの国の監督と資金注入
再建団体に指定されると、自治体の財政は、完全に自治省と都道府県のコントロール下に置かれます。わずか千円の出費でも、「お伺い」を立てなければなりません。財政再建計画に基づくなど倒産企業の再建にも似ていますが、赤字は起債で埋め、国が利子補給を行うなど、公的資金の注入が論議となった金融機関の救済策と良く似た方法で再建が進められます。
註:2001年度以降の決算カードは、総務省のホームページ上で全自治体について公表されています。
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